2020年1月 ASL "Fahrenheit 352[HF8]"対戦記録

 2020年1月のYSGAでASLを対戦した。
 シナリオは"Fahrenheit 352[HF8]"である。
 これは、その対戦記録である。

1 シナリオの概要
2 シナリオの分析と方針
3 対戦の経過
4 対戦を終えて
5 ルールについて
  脚注

1 シナリオの概要
1.1 全般
 1945年1月のシナリオで、ドイツ・フランス国境地帯にあるフランス側の村を守るドイツ軍にアメリカ軍が攻撃するシナリオである。

 勝利条件は、米軍が、ゲーム終了時に、2つある勝利条件建物の双方に操作班ではない複数兵カウンターで統制状態のものを1つ以上置けば勝利というものだった。

 ASLヒストリカル・モジュール"Hatten in Flames"のなかのシナリオの1つである。そのため、HFシナリオ特別ルールが適用される。積雪状態となり、また冬であるにもかかわらず麦畑が耕作地となる。さらに、一部の指定の建物を除いて、建物は地上レベルのみの一階建て建物となる。
 地図盤も、現地に基づいて作られたヒストリカルマップが使われた。

 ゲームの長さは6ターンであった。6ターンの裏まであるため、ドイツ軍が最後に米軍の勝利条件を崩して勝利、ということもあり得るシナリオである。

 道路を挟んで、南西に米軍、北東にドイツ軍が配置する。

1.2 攻撃側アメリカ軍について
 エリートと一線級が混在する13個分隊がその歩兵戦力である。指揮修整の高い9-2指揮官もおり、指揮官は合計4人で不足ない。支援火器も、中機関銃が3挺、白燐煙幕弾が撃てる最新式のバズーカ砲が3挺、同様に白燐煙幕弾が撃てる60ミリ軽迫撃砲2門、爆薬1個と、充実している。シナリオ特別ルールで、軽迫撃砲は、1ターン目だけ、白燐煙幕弾を撃てる可能性が高い。
 装甲戦闘車両(AFV)は、M4シャーマン戦車が、盤上に置く3輛と第1ターンに西端から進入する3輛の合計6輛であった。長砲身の76ミリ砲を搭載した対戦車能力に秀でたものが3輛と、75ミリ砲装備で白燐煙幕弾も撃てるものが3輛であった。

1.3 防御側ドイツ軍について
 11個分隊の一線級の歩兵が最初の兵力である。
 3ターン目に、9-2指揮官に率いられた3個のエリート分隊と、戦車4輛があらわれる。戦車は、IV号戦車J型が2輛と、火炎放射器搭載のヘッツアー駆逐戦車が2輛であった。
 戦車のうち2輛は、先行して2ターンに登場することができた。

1.4 担当
 当日サイコロを振って担当する陣営を決める方式で臨んだ。
 結果、わたしが防御側のドイツ軍を担当になった(以降、ドイツ軍プレイヤーと表記する)。

2 シナリオの分析と方針
2.1 分析
 最初に、両軍にAFVが登場するシナリオであるため、撃ち合った場合の優劣を考えたい。IV号戦車とM4シャーマン戦車である。
 2種類のM4シャーマン戦車は、主砲が異なるだけで、移動ポイントも装甲も変わらない。M4シャーマン戦車の装甲厚はIV号戦車より厚い。ただし、M4シャーマン戦車は車高が高いため、大型目標と扱われ、砲弾を命中させるのが容易である。装甲厚以外に防御力に影響する部分である。
 そういった意味では、75ミリ砲搭載のM4シャーマン戦車は、IV号戦車と概ね互角に撃ちあえる。76ミリ長砲身砲搭載のM4シャーマン戦車は、貫通力がIV号戦車とほぼ互角であるので、装甲の分、IV号戦車に対して若干有利と言えよう。
 なお、機動力と砲塔の旋回速度では、IV号戦車が劣る。

 ヘッツァー火炎放射駆逐戦車は、射程距離は1ヘクスと短いものの、歩兵に対して30火力地形の防御効果なしで攻撃できる圧倒的な兵器である(2ヘクス先に対しては半減火力となる)。火炎放射器は車輌に対しても有効で、通常射程内なら2D6で8以下で撃破できる。正面装甲は、両シャーマン戦車の主砲やバズーカで撃ち抜くことは困難である。無砲塔であり狭隘な地形では扱いづらいが、ドイツ軍の反撃の華となるだろう。

 次に、米軍の勝利条件建物への接近経路について考えたい。接近経路は3つあり、それぞれ利点・欠点がある。
 2.1.1 西側
 建物が建て込んでいて、安全に前進しやすい経路である。また、西側から登場する戦車部隊との合流もしやすい。
 ただし、勝利条件建物への距離が長いのが問題である。また、1つ目(西側)の勝利条件建物から2つ目(東側)の勝利条件建物へと建物伝いで進める経路の幅が2ヘクスしかない。1つ目を確保してから、どう2つ目を攻めるかが鍵になる経路と考えられる。
 2.1.2 中央
 果樹園で、防御側からの視界が一部妨害されているが、比較的開けていて防御射撃を受けやすい。支援なしに進むのは難しい経路と考えられる。ただ、迫撃砲や戦車の煙幕や、戦車自身の防護効果を集中させれば、進めない経路ではない。その場合、勝利条件建物に最短で接近できるメリットがある。
 歩兵が混乱した際に、建物をめざして潰走すると相当の距離を下がってしまうため、指揮官の配置を工夫して、匍匐後退などでテクニカルに潰走させ、混乱した兵をまとめる必要がある(ちなみに、こうした回復を要するユニットを集結させる区域は、再集結地点;Rally Pointや、回復天国;Rally Heavenと呼ばれる。建物や林をそうするのが標準的である)。
 2.1.3 東側
 建物の密度は中程度で、中央ほど開けていない。また、南北に走る生け垣で中央からのLOS(Line Of Sight;視線)が遮られていて、射撃を受けにくい利点がある。ただし、勝利条件建物へ距離があるのは西側と同じデメリットである。
 また、ドイツ軍の増援が北東からあらわれるため、これに直面するというデメリットもあった。

 以上の戦車の性能比較や、米軍のとりうる接近経路、双方の戦力などに基づいて、方針と配置を検討した。

2.2 方針と配置
 先述のヘッツアー火炎放射戦車の説明で「反撃の華」と書いた。このシナリオは、ドイツ軍が反撃するシナリオだと考えていたため、そう書いた。なぜならば、アメリカ軍は分隊火力でドイツ軍分隊の1.5倍であり、歩兵の数でも1.5倍ある。戦車の支援も6輛あり、序盤の歩兵戦でドイツ軍は米軍に圧倒されると考えていたからだ。東側の勝利条件建物の一角に兵を残し反撃の支とう点として、増援とともに米軍の「統制状態」を1箇所でも崩しに行く、そういう勝ち方を、ドイツ軍プレイヤーはデザインしていた。建物の支配を得たり取り返したりするのは、相手を建物から完全に排除しなければならないため、困難である。それに対して「統制状態」でなくするのは、白兵戦に突撃して除去されずに混戦に拘束したり、車輌でVBMフリーズ[1]をしかけて撃破されない等、より容易である(ただし、VBMフリーズの場合は、白兵戦で撃破される確率が高くなる覚悟で停止しないと混戦に拘束できない)。移動フェイズ(MPh)中でも停止していれば火力が減じられない火炎放射器戦車であれば、1区域の敵兵を火炎放射器で焼き混乱させ、別の区域の敵にVBMフリーズをかけて拘束すれば、2区域を「統制状態」で無くすことができる。ヘッツアー火炎放射戦車が「反撃の華」となる理由が理解いただけたと思う。

 次に考えたのが、上述の方針のようにシナリオを進めるために、どう初期配置の部隊を置くか、である。戦線は広く、分隊は11個と少ない。効率的に臨機射撃をおこなって残留火力を置いて米兵の異動を妨害できるよう、火線の利用も考えて置かなければならない。
 米軍は、西側の経路をとる可能性が高いと考えた。士気が低く混乱しやすく、混乱すると士気が上がって回復しやすい米兵にとっては、回復地形である建物伝いに進めるというのは魅力的である。戦車との連携も取りやすい。そうなると、米軍は中央に助攻をしかけてくる、ないし西側を助攻として中央を主功とする可能性がある。2つの接近経路が、連携できるからである。したがって、東側の経路は取りにくいと考えた。西側に一部の兵力を割く以上、連携しづらい東側は選択肢として取りにくいからである。
 しかし、そう考えて東側に兵力をまったく置かなければ、そこを米軍が突いてくるかもしれない。したがって、ドイツ軍に10個与えられているダミーカウンターを投入し、兵がいるように見せかける。東側には実質半個分隊1個しかいない。ダミースタック3個を投入して、1個小隊がいてもおかしくないように見せかけている。
 中央には3.5個分隊を置く。果樹園に視界を遮られないよう、果樹園区域にも置く。地形効果がないので、シナリオOBであたえられたタコツボを利用した。軽機関銃1挺をここに配し、斜めの火線で米軍の接近を妨げるつもりだった。
 西側は、2.5個分隊とダミー1個で守る。軽機関銃を1挺配し、火線を考えた。この軽機は、建物の合間から中央も指向できる位置だ。
 西側の勝利条件建物には1.5個分隊と指揮官も軽機関銃1挺を置いた。また、この建物の裏の道路に、パンツァーシュレッケを持った分隊と指揮官をタコツボに入れて配置する(特別ルールで、舗装道路であってもタコツボを置ける)。米軍の戦車が、建物の裏側に回り込んで潰走や回復を阻止することに備えての措置である。
 東側の勝利条件建物とその近くに、2個分隊と指揮官、中機関銃1挺、ダミー1個を置く。これは予備兵力として機能する。北東から来る増援の進入路を守るのにも使える位置とした。

 以上のような方針・配置で対戦に臨んだ。

3 対戦の経過

・写真1 開始時の盤面。黄緑のコマがアメリカ軍、ライトブルーのコマがドイツ軍。手前が北、左が東である。黄色いV字があるのが、勝利条件に関係する建物。


3.1 序盤(第1ターン~第2ターン)
 ドイツ軍プレイヤーの読みがあたって、米軍は西側に主力を投入してきた。中央は機関銃を基幹とする火力スタックと軽迫撃砲、戦車がいるのみである。東側には米兵はいない。主力同士のぶつかり合いとなった。

 米軍側にとって誤算であっただろうことは、準備射撃フェイズ(PFPh)に白燐煙幕弾をまったく撃てなかったことである。M4シャーマン戦車も、初ターンにボーナスのある軽迫撃砲も、白燐煙幕弾はなしであった。この誤算が、米軍の予定をどう狂わせたか、知りたいところである。
 それでも移動フェイズ(MPh)に米軍が西側から殺到するのは止めようがない。ドイツ軍の半個分隊が、前進射撃(AFPh)で混乱させられ、取り囲まれて捕虜となる。米軍分隊は、自動火器ボーナスがあり前進射撃でも十分な火力を発揮するため、脅威であった。

・写真2 第1ターンの米軍移動フェイズ(MPh)中の1枚。右上のFinalFireマーカーが置かれたドイツ軍の分隊は、緊急防御射撃[2]をおこなって混乱している。リスクのある射撃だったが、潰走路を維持できていたため行った。
 とても便利な「分隊火力だけ射撃済み」マーカーが中央に見えている。後期のドイツ軍は、支援火器を持っていなくても、パンツァーファウスト利用の可能性があるため、判別に役立つ。


 裏のドイツ軍プレイヤーターンで、ドイツ軍は、東から部隊を西へとシフトさせる。東には敵が来ないことがわかったからである。ほとんどが、ダミースタックだが、ダミー状態を維持させたまま、警戒移動や米軍LOS外の移動で移動させた。相手にダミーと見抜かれていても、狙撃の的になってくれる効果があるからである。
 その他の部隊は西を補強しない。むしろ、下がらせて米軍から遠ざける。長射程・大火力で、戦車の支援もある米軍とは、離れて戦いたかったのである。

 第2ターン、米軍は順調に前進する。西側の接近経路を選んだため、順調に前進しないと、東側の勝利条件建物にたどり着く前に時間切れになってしまう。したがって、米軍プレイヤーは順調に見えても落ち着いてはいなかっただろうと想像する。西側勝利条件建物手前で守るドイツ軍スタックに対して、M4シャーマン戦車の1輛が、車載煙幕展帳機で煙幕を撒きながら、VBMフリーズ[1]をしかけてきた。他を撃てない状態にして、無力化するのが目的だ。この戦車は、磁気吸着爆雷を用いたCC対応射撃でドイツ兵に撃破された。
 その間に、米軍は歩兵を安全に前進させている。また、76ミリ長砲身砲装備のM4シャーマン戦車2輛が北側に進出して、ドイツ軍の側面を脅かしていた。この動きは、北東からあらわれるドイツ軍戦車を牽制する意味もあったと考える。

 ドイツ軍は、米兵に接近された分隊を、潰走フェイズ(RtPh)に、自発的に混乱させ、東へと潰走させた。大火力の米軍に、白兵戦をしかけられるのを恐れたためである。

 裏のドイツ軍プレイヤーターン、先行して登場させられる車輌2輛は、IV号戦車を選択する。この戦車は、M4シャーマン戦車に装甲を撃ち抜かれる可能性がある。したがって、ため、位置取りが重要になる。それゆえ、早めに移動させて良い位置をとりたかったためである。ヘッツァー火炎放射戦車であれば、側面にだけ注意していれば良い。北東の隅から盤内に進入し、1輛は北側に配置。もう1輛は、時間はかかるが東側に向かわせる。
 歩兵は、移動フェイズ(MPh)と突撃フェイズ(APh)でスカルキング[3]をして、米軍の射撃から逃れつつ戦線を維持した。

 2ターンを終え、戦線は概ねドイツ軍プレイヤーの想定の中に収まっていた。後から振り返ると、米軍プレイヤーにとって、中央に対する攻撃が、白燐煙幕弾があった場合の計画とどう違っていたか知りたいところではある。ただし、対戦中はそういったことまで考えを巡らせる余裕はなかった。

3.2 中盤(第3ターン~第4ターン)
 米軍は西側勝利条件建物に、警戒移動でにじり寄る。また、M4シャーマン戦車の煙幕弾の援護の下、半個分隊2個とバズーカを持った1個分隊が、北側に延翼してきた。ドイツ軍は軽機関銃の火線でこれを止めようとしたが、半個分隊を釘付かせたのみであった。1.5個分隊には、すり抜けられてしまう。

・写真3 第3ターンのアメリカ軍のプレイヤーターンの終了時。米軍は勝利条件建物に迫りつつ(赤い矢印)、北側に延翼してきた(オレンジの矢印)。


 3ターン裏のドイツ軍プレイヤーターン、ドイツ軍に増援が登場する。歩兵3個分隊は、接近経路が米軍の遮られていないのを幸いに、指揮官とともにスタックして東側の勝利条件建物に直進する(写真4のオレンジの矢印)。
 2輛の火炎放射戦車は、早速移動フェイズ中に射撃をおこない、北側に延翼してきた米軍を攻撃した(写真4の赤い円の中)。米軍は、半個分隊が除去され、バズーカを持った1個分隊が混乱した。
 米軍の延翼部隊に、反撃の華のヘッツアー火炎放射戦車を投入したのには理由がある。ドイツ軍は、写真4に青い矢印で描いたような、混乱・回復のサイクルを保って戦線を維持したかった。米軍部隊が後方に回ると、前線のドイツ兵がドイツ軍プレイヤーの望む方向に潰走できなくなり、このサイクルを乱されるためである。IV号戦車のうち1輛を南側に回したのも、米軍戦車が南側に延翼するのを妨げる意図があった。

・写真4 第3ターンのドイツ軍移動フェイズ(MPh)終了時。矢印等の説明は前段落参照。


 第4ターン、翼を火炎放射戦車に潰された米軍は、移動フェイズ(MPh)に戦車部隊を北側に大きく回り込ませる。76ミリ長砲身砲搭載のM4シャーマン戦車が、前後からドイツ軍の戦車隊3輛を取り囲むかたちとなった。2輛の火炎放射戦車は、LOS内で米軍戦車がMPを費やしたことに対応して機動状態にとなる。次の移動のことを考え、後進機動状態であった。1輛は、起動と同時に向きを変えて厚い正面を米軍戦車に向けた。IV号戦車は、果樹園の中で隠蔽状態であったため、これを維持する。
 米軍歩兵は、9-2指揮官を中心に東側勝利条件多建物をめざす。しかし、幅2ヘクスの建物ヘクス伝いにしか近づけない。左右に広がると、果樹園や車輌の残骸といった地形の防御効果の小さい地形でドイツ軍の臨機射撃に晒されるため、出られないのである。
 ドイツ軍は、3個分隊の増援を得て2ヘクスの幅を守っているので、比較的守りやすかった。それでも、このターンに、9-1指揮官に率いられた米軍スタックが、東側勝利条件建物にとりついている。ただし、ドイツ軍プレイヤーとしては、前述のとおり、火炎放射戦車で相手の統制状態を崩せると考えているので、未だ慌ててはいない。

 裏のドイツ軍プレイヤーターン、準備射撃(PFPh)で、取り囲まれたIV号戦車が後方のM4シャーマン戦車を撃って撃破する。さらに、追加射撃[4]で正面のM4シャーマン戦車を撃って、撃破に至らないまでも、走行不能とする。これは、相手にVBMフリーズの機会を奪うという意味で、大きな功績であった。
 東側勝利条件建物にとりついた米兵に対しても、隣接区域から倍火力の射撃を浴びせて、分隊を混乱させる。この区域は、米兵が潰走フェイズ(RtPh)に潰走して逃げたため、ドイツ軍が突撃フェイズ(APh)に突撃してとりかえしている。
 その後で、移動フェイズ(MPh)に、ヘッツァー火炎放射戦車が移動中に停止して射撃し米兵を薙ぎ払いながら、東側勝利条件建物に近づく。
 東側の勝利条件建物が焦点となり、両軍がそこに集中しつつあった。

3.3 終盤(第5ターン~第6ターン)

 第5ターンは、米軍の激しい準備射撃から始まる。9-2指揮官率いる米軍の火力グループが、勝利条件建物を守るドイツ兵に倍火力での射撃を浴びせて、混乱させる。北側では、走行不能となったM4シャーマン戦車がドイツ軍のIV号戦車を撃って、これを撃破する。南側でも、延翼を警戒していたIV号戦車をM4シャーマン戦車が撃って、走行不能とする。このM4シャーマン戦車は、追加射撃を撃ったが6ゾロを振って、主砲を永久故障させてしまった。
 ドイツ軍も防御射撃(DFPh)で撃ち返すが、9-2指揮官に率いられたスタックはさすがに強い。士気チェックに対して、一部の兵が釘付いただけであった。ドイツ軍プレイヤーは、白兵戦に持ち込まれると火力と指揮修整で不利と考え、東側勝利条件建物の米兵に直面した区域から、自発的潰走で部隊を後方に下げた。
 実は、米軍の破壊された戦車から生き残った操作班が、ドイツ軍の潰走や回復を妨げられる位置にいた(写真5左下)。米軍プレイヤーは、この後方を突く手を用いなかった。
 突撃フェイズ(APh)で、米軍は、東側勝利条件建物の2区域に、指揮官やヒーローを伴った分隊を突撃させる。一時的に、米軍の勝利条件がまた達成されている。

・写真5 第5ターンの米軍プレイヤーターン終了時。


 裏のドイツ軍プレイヤーターンで、ドイツ軍は準備射撃(PFPh)で反撃する。米軍ヒーローのいるスタックを火炎放射器で焼いて、KIAで除去する。9-2指揮官のいるスタックに対しては、射撃を浴びせるも効果なし。9-2指揮官がいると、指揮修整が士気チェックにも影響し、堅い。ドイツ軍は、9-2指揮官のいる区域に対して、複数区域から突撃できるよう部隊を移動フェイズ(MPh)に散らして、リスクの分散を図った。自動火器ボーナスのある米兵も、分隊散布射撃能力があるのは、空挺などのエリートのみであるため、このシナリオでは同時に複数ヘクスを射撃できない。散布射撃だと複数ヘクスに対して指揮修整が効いて影響が大きくなるので、この点はドイツ軍は助かった。
 突撃フェイズ(APh)でこの9-2指揮官がいる区域に対してドイツ兵が突撃する。彼らは白兵戦(CCPh)を生き抜き、相手を混戦状態に拘束する。火炎放射器で焼いて空いた区域にも、後方からドイツ軍が突撃した。再び、米軍の勝利条件は崩れた。

 第6ターン、いよいよ最終ターンである。勝敗の焦点は、完全に東側勝利条件建物となっていた。米軍が、隣接区域から倍火力で射撃してドイツ兵を混乱させ、突撃フェイズにその区域を確保する。前のターンと同じである。米軍は、さらに後方から増援を送り込もうとするが、両翼を確保したドイツ軍の臨機射撃に阻まれる。混戦となっている区域に米兵2個分隊がたどり着こうとするが、南側の走行不能となったIV号戦車の臨機射撃で、1個分隊が釘付いてたどり着けなかった。これは、白兵戦の行方に大きく寄与した。
 米軍には、あと1輛健在なM4シャーマン戦車があったが、これは、移動しようとしたところを、ヘッツアー火炎放射戦車に焼かれて炎上した。

 実は、米軍はこのターンの始めに西側勝利条件建物で勝利条件を満たしていなかった。指揮官と、混乱した分隊しかいなかったのである。これは、ドイツ軍プレイヤーターンの回復フェイズ(RPh)で回復することによって、勝利条件を満たした。しかし、米軍は東側建物に兵力を集中させていて、余裕がなかったのである。

 第6ターンのドイツ軍プレイヤーターンは、米軍が勝利条件を達成した状態で迎えた。東側建物では、2個分隊の米兵が統制状態であり(ヘクスK17、1個は戦意高揚状態)、もう2個分隊、混戦中の者がいる(ヘクスL17)。混戦中の者は、プレイヤーターン最後の白兵戦フェイズ(CCPh)でドイツ軍を除去できれば、混戦に拘束されず統制状態となる。西側の建物には、米軍1個分隊と指揮官があった(ヘクスK20)。両方の建物に統制状態の複数兵カウンター1つ以上がいる。ドイツ軍は、この勝利条件を崩す必要があった。

 まずK16・L16のスタックが準備射撃(PFPh)に待機射撃を宣言する。勝利条件区域への機動の余地がなく、彼らは移動ではなく突撃すれば良いためである。
 この射撃フェイズで、ドイツ軍のIV号戦車は、後述のドイツ軍の移動を援護するため、煙幕弾を撃つ試みをするべきであった。
 その後、移動フェイズ(MPh)に入る。まずはヘッツァー火炎放射戦車が、米兵の守るヘクスK17を焼く。KIAの結果が出て、米軍2個分隊が消える。30火力地形効果無しの火炎放射器だと、期待値の7でマイナス4士気チェック、6で損耗、5以下でKIAとなる。米軍としては、さぞかしやっかいな兵器であっただろう。
 このヘッツァー火炎放射戦車は、その後始動して、混戦中のヘクスL17まで迂回移動で進み、迂回中のまま停止する。これで、この駆逐戦車が白兵戦で撃破されなければ、米軍は混戦のままとなり、勝利条件を満たせない。白兵戦で戦車に対して分隊を割くと、対歩兵白兵戦の火力が減じられるため、米軍は判断を迫られる。なお、車輌は、機動状態であれば相手側の対戦車白兵戦に不利な修整があるが、混戦に拘束することもない。したがって、ここは停止する必要があった。
 もう1輛のヘッツァー火炎放射戦車が、移動でL17に近づき、火炎を浴びせる。これは、車輌は目標に指定されない限りは火炎放射器で害されないため、敵味方共々歩兵を狙ったのである。KIAの出目が出て歩兵が除去・混乱となれば、自然と米軍の勝利条件を崩せる。しかし、ここでの出目は11で、火炎放射器は燃料切れとなる。ヘッツァー火炎放射戦車も、自動的に帰還となり、これ以上自由には行動できない。

 移動フェイズ(MPh)は終わらない。ドイツ軍は、残った兵力で西側勝利条件建物を指向する。1個分隊しか米兵はいないのである。ヘクスL17に、スタックオーバーにならずに突撃できる兵力だけを残す。後は、南北から西側勝利条件建物の米軍1個分隊を狙った。
 米軍の臨機射撃も必死だった。ドイツ軍も移動力に余裕がないため、米軍分隊や戦車のの隣を通らざるを得ない。ドイツ兵は倍火力の射撃や主砲の近接射撃を受ける。このドイツ兵の移動を援護するのに、IV号戦車で煙幕弾を撃っておけば良かった。結果から言えば煙幕は必要なく、奇跡的に2個分隊が、ヘクスK20の米軍分隊に隣接した。
 ヘクスK20の米軍分隊自身も、必死に臨機射撃・連続臨機射撃で迎え撃つ。ここで、意外なことが起きた。米軍の臨機射撃の出目が低く、ドイツ軍の狙撃兵が活性化する。その狙撃兵が、ヘクスK20の米軍指揮官に命中し、殺してしまった。残された米軍分隊は、指揮官喪失士気チェックに失敗し、混乱。これで米軍は勝利条件を満たさなくなり、ドイツ軍の勝利が確定した。

・写真6 ゲーム終了時の様子。赤い円が米兵vsドイツ兵+ドイツ軍戦車の白兵戦となったヘクスL17、青い円が、結局勝敗を決めた、狙撃が命中したヘクスK20。


4 対戦を終えて
 第1ターンで、米軍に白燐煙幕が出なかったのに大きく助けられた戦いであった。結果として、米軍は中央から進むことができなかった。接近経路が西側に限られたことで、ドイツ軍が守るべき幅が狭くなり、対応しやすかった。
 煙幕弾のある迫撃砲は、ROF[5]が回れば複数ヘクスに煙幕を置けるため、攻撃側の援護射撃火器としては非常に強力である。特に、このシナリオのように、分隊火力で上回っているときは、視界を遮って近づいて、そのまま白兵戦に持ち込める。大きなアドバンテージになる。これが出なかった影響は大きかった。
 米軍には複数回戦渦が発生し、戦意高揚やヒーロー登場になるなど、運が傾いた時期もあった。しかし、士気が高いヒーローや戦意高揚分隊も、火炎放射器が士気チェックではなく除去(KIA)の結果を出したため、活躍の場を奪われてしまった。
 最終的には、余裕のなくなった米軍に狙撃という不運が襲って決着した戦いであった。

5 ルールについて
 特になし。

脚注
 VBMフリーズ:VBM Freeze;敵の射撃を制限するテクニック。自軍の装甲戦闘車輛を、迂回移動(Vehicle Bypass Move)で、敵の歩兵ユニット等のいる建物・林区域に進入させ、射撃の目標制限のルールを利用して、他を撃てないようにする。白兵戦による反撃を防ぐために機動(Motion)状態で移動フェイズ(MPh)を終了することが多い。防御側の対応策として、直前区域の車輛に対して臨機射撃して残留火力を残して後続の敵歩兵を防ぐ方法や、CC対応射撃で敵AFVを攻撃する、等がある。

 FPF:Final Protective Fire;緊急防御射撃。相手の移動フェイズ(MPh)中に、敵ユニットの移動に応じておこなう防御臨機射撃のうち、射撃を撃ち尽くした歩兵がおこなう射撃。火力が半減する、『隣接』か同一区域にいる敵に対してしかおこなえない、等の制限がある。加えて、射撃のサイコロの出目を自身に対する士気チェックの出目として適用する、というペナルティがある。出目によっては釘づいたり混乱したりする恐れがある、敵に連接された歩兵の最終手段の一つである。

スカルキング:Skulking;移動フェイズで敵のLOS(視線)外に警戒移動で退き臨機射撃や防御射撃を逃れ、突撃フェイズ(AFPh)で戻り、戦線を維持する防御のテクニック。こそこそ移動とも言う。

追加射撃:Intensive Fire;射撃を終えた砲が、もう一回だけ実施できる射撃。命中判定にペナルティが有り、砲が故障する可能性が上がり、残留火力を残さない。砲の操作班が釘付いているとできないのと、残留火力を残さないのを忘れがちである。1回多く射撃できる利益は大きく、故障のリスクを負いながら実施しているところをよく見る。

 ROF:Rate Of Fire;複数回射撃の可能性。ROFのある火器の射撃で振ったサイコロの、色のついた方の出目がROFの値以下であった場合、その火器は射撃能力を喪失せず、未だ射撃できる。重機関銃や多くの迫撃砲のROFは3である。これは、2回に1回は続けて射撃できることを意味しており、額面の火力以上の威力を発揮する場合がある。ただし、他のルールにより、続く射撃の射界等が制限される場合がある。

以上
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