【再掲】2015年 7月ASL"Lagus Assault Guns[174]"対戦記録

※ この記事は旧ブログの記事をリライトし再掲したものです。

1 シナリオの概要
2 シナリオの分析と方針
3 対戦の経過
4 対戦を終えて
5 ルールについて

 2015年7月の千葉会にお邪魔して、ASLを対戦しました。

・Lagus Assault Guns[174]


1 シナリオの概要
(1)全般
 1944年8月、ソ連とフィンランドとの継続戦争末期のシナリオです。
 フィンランド軍が守る村を。ソ連軍が攻撃します。
 シナリオの長さは、6.5ターンです。
 ソ連軍の勝利条件は2つあり、いずれかを達成すれば勝ちです。
 a ヘクス17R4から3ヘクス以内の建物(と、もし瓦礫化していれば、その瓦礫)6個を支配する。
   ※建物は、該当の範囲に7個あります。
 b 主砲が機能した移動可能な戦車2両と、歩兵5個分隊を地図盤北側に到達させる。
 フィンランド軍は、これらの達成を妨げれば勝ちです。

(2)攻撃側ソ連軍について
 ソ連軍は二波に分かれて南側から進入します。
 1ターン目に登場する第一波は、8個分隊と指揮官x2、重機関銃x1、軽機関銃x3と4両のAFV(装甲戦闘車両)です。AFVの内訳は、IS-2(スターリン重戦車)x1、T-34/85中戦車x2、SU-152(152ミリ自走砲)x1でした。
 2ターン目に登場する第二波は、6-2-8エリート歩兵が6個分隊です。彼らは突撃工兵で、火炎放射器x2、爆薬x2を持っています。指揮官が1人いて、軽機x1もありました。
 豊富な戦力ですが、相手にするのは精強なフィンランド兵です。

(3)防御側フィンランド軍について
 守るフィンランド軍の基幹は、一線級10個分隊の歩兵です。彼らは火力と士気が高く、自己回復能力を持ち、静粛(隠蔽の獲得や不意打ち判定で有利)で、畏縮[1]しないという類い希な能力を持っています。
 さらに、このシナリオの時期には、パンツァーファウスト能力も持ちます。ただし、本場のドイツ軍ほどではありません。分隊の使用に際してはサイコロを1個振って2以下を出す必要があり、射程も1ヘクスに限られます。使用ナンバー・射程ともに、ドイツ軍より1劣ります。
 本来は射撃を試みる度に判定するパンツァーファウストですが、このシナリオでは、特別ルールで、2個まで、持っている歩兵を事前に指定しておけます。
 支援火器は、中機関銃x1、軽機関銃x2、パンツアーシュレツケx1です。ほか、支援火器ではないのですが、81ミリ迫撃砲が1門ありました。
 指揮官は2名、ヒーローが1名いました。

 装甲戦力は、2両のIII号突撃砲です。ドイツ製の長砲身のG型ですが、煙幕展帳機がついていません。煙幕展帳機ががないことを、わたしは、対戦の途中まで見落としていました。

(4)担当
 わたしが、守るフィンランド軍を担当しました(以下、フィンランド軍プレイヤーと呼称します)。

2 シナリオの分析と方針
(1)分析
 地図盤2枚を縦方向に攻める、よくあるタイプのシナリオです。しかし、西側の地図盤17の最西端は2ヘクスの池で通過不能、東側地図盤の東端も小川等で通過に時間がかかるので、攻撃側の接近経路は限られます。
 さらに東側地図盤は林で覆われていて、林道が1本通っているのみ、車両の機動は困難です。
 ソ連軍がbの勝利条件を達成するには、車両の半数を無事に通過させなくてはなりません。フィンランド軍プレイヤーは、これは難しいと考えました。ただ、妨げる手当を全くしないと、容易に達成される恐れがあります。フィンランド軍プレイヤーの意図は、ソ連軍がaを狙ってくるので地図盤17をメインに守ることでした。かつ、側面から回り込まれるのとbを狙ってくる場合に備えて、東側の地図盤32の林道も少数で押さえる、という方針を立てました。

(2)方針と配置
 前述の方針に基づいて配置を考えます。

 フィンランド軍プレイヤーが最初に考えたのは、砲と車両の配置でした。これは、鈴木拓也氏(2008)の「Fight to the last Ditch for ASL」『コマンドマガジン』,第82号,P31の配置を考える順番に従ってのことです。わたしは、この記事ほど厳密ではないですが、おおむねこの順に従って考えています。
 III号突撃砲は、2両とも地図盤17に置きます。1両は車体遮蔽を取れる石壁の背後に、もう1両は、敵の側面を狙える最右翼としました。
 突撃砲を東側の地図盤32に置かなかったのは、林道なら対戦車火器を持った歩兵のみで守れると考えたからです。

 次に歩兵です。
 地図盤17の村前面には、林ヘクスが広がって森を作っています。フィンランド軍プレイヤーは、ここがソ連軍の近接経路正面になると考えました。半個分隊2個とダミースタックx1を配置します。最初に考えていた前衛の配置は、臨機射撃で残留火力を置きやすいように突出したものでした。しかし、これだと敵戦車がVBMフリーズを容易にかけられます。前衛が簡単に無力化されないよう、すこし引っ込めます。
 部隊を引っ込めたせいで残留火力を置き辛くなったヘクスを押さえるため、右翼に軽機関銃を持った1個分隊と迫撃砲を配置しました。
 ユニットを置きながら、森の正面を残留火力で覆えるように、臨機射撃の順番を考えていました。
 この前衛は、敵戦車と敵歩兵に蹂躙されて1ターンしか保たないかもしれないと覚悟しました。なので、効率的に残留火力を残すことを第一としました。1ターンでも敵の足を止められればよい、体勢を崩せれば良いと考えたのです。

 中央に、半個分隊2個の前衛の後詰めとなる位置に1個分隊をおき、これにパンツァーファウストを持たせておきます。林の隙間を抜けて敵戦車が後方に回り込み、退路を断つのを防ぐためでした。
 さらに、地図盤17と32の境目付近に軽機関銃分隊を置きます。これは火線を狙いました。
 地図盤32の林道は、パンツァーシュレッケ分隊とパンツァーファウスト分隊で押さえます。

 シナリオ特別ルールであたえられた隠匿配置(HIP)の1個分隊は、地図盤17南側の建物の2階にしました。ヒーローもここにスタックさせます。
 攻撃側のソ連軍は勝利条件を達成するために前へ前へ進まざるをえません。フィンランド軍プレイヤーは、ソ連軍には索敵や掃討をする十分な時間がなく、2階に潜んでいる兵を見つける余裕はないと考えました。この兵士たちが見過ごされれば、良いタイミングで姿をあらわして敵の潰走を妨げたり、建物を取り返せる、そう考えました。

 勝利条件エリアの建物2階に中機関銃と分隊、指揮官を置きます。あとは、前線の歩兵が下がってきて主抵抗線を作ることを企図していました。フィンランド軍の高い士気と自己回復能力故に、できると考えました。
 事前に、第二線の防衛線を引く位置と、それに必要な分隊数もおおむね考えておきました。

 2個分隊と指揮官を後方の林道に配置して、予備としました。

 車両の位置をわからなくするため、地図盤32後方にダミーの5/8インチスタックをひとつ作りました。しかしこれは、必然性のない位置であったため、開始直後にソ連軍にダミーと見破られていました。

 画像手前が北、奥が南です。灰色のコマがフィンランド軍、茶色のコマがソ連軍です。
↑ 配置と、事前の防御臨機射撃の計画がこちらです。森の前面に残留火力を置けるよう考えています。唯一、緑色のヘクスにのみ残留火力を置きがたいのですが、ここに置こうとするとVBMフリーズをかけられやすい配置になると考え、断念しました。

3 対戦の経過
(1)序盤:前進陣地での抵抗
 第1ターンにソ連軍の歩兵主力と、AFV(装甲戦闘車両)が進入してきます。自分は、地図盤17の森の正面からの進入を予想していました。敵は、それより若干左より、地図盤2枚の接点付近から入ってきました。

 前述の通り、前衛は戦車と歩兵に蹂躙されて1ターンしか持たないかもしれない、そうフィンランド軍は覚悟していました。
 しかし、ソ連軍はそこまで食い込んで来ませんでした。理由は二つあると考えられます。一つは、フィンランド軍にパンツァーファウストがあるので、AFVを温存するためには容易に近づけなかったためです。もう一つは、序盤の臨機射撃が効いて、ソ連軍の損害が多かったためです。フィンランド軍のサイコロの出目が良く、森の前面に迫った敵1.5個分隊を混乱させ、半個分隊を除去しました。第一陣の四分の一近くの兵が無力化されたのです。これでは、攻勢を続けづらいのです。
 フィンランド軍は畏縮しないため、臨機射撃の計画が立てやすく、効率的に残留火力を置くことができました。

↑ 実際の第1ターンソ連軍移動フェイズ(MPh)の終わり。残留火力が置きづらいと思っていたヘクスも、右前面から来る敵がいなかったため、撃てました。

 運良く生き残ったフィンランド軍の半個分隊らは森の中を下がり、次の戦線を作ります。2個分隊と指揮官の予備は、地図盤17と32の中央付近に投入しました。敵が予想より左寄りに攻めてきたため、中央付近で兵力が不足すると考えたからです。

 ソ連軍のAFVのうち、152ミリ自走砲がフィンランド軍右翼に進出します。この車両は、後方のフィンランド軍中機関銃を撃てる位置につきました。そこはちょうど、フィンランド軍が予想していた位置の一つでした。重自走砲の火力を一時的に無力化するために、迫撃砲で煙幕弾を撃ち込みます。
 煙の遮蔽を嫌った152ミリ自走砲は、位置を変えようと次のターンに前に出ます。が、1ヘクス出過ぎました。石壁の背後で車体遮蔽を得ていたフィンランド軍のIII号突撃砲が、硬芯徹甲弾を撃ってこれを撃破します。
 フィンランド軍右翼正面には、続いてT-34/85戦車2両がやってきました。

 ソ連軍歩兵は、2ターン目に第二波の増援も得て、フィンランド軍の戦線を攻撃します。地図盤17の森の中では、ソ連軍の分隊がフィンランド軍の半個分隊に追いついて、白兵戦に持ち込まれます。しかし、ここのフィンランド兵は、不意打ちを取って離脱できました。そのため、フィンランド軍は戦線を維持できていました。

(2)中盤:主抵抗線の維持
 3ターン目、歩兵のそろったソ連軍は、フィンランド軍の前線に攻め寄せます。フィンランド軍もこれを臨機射撃で迎え撃ちました。残留火力が帯のように敷き詰められます。
 
 ソ連軍の突破は成りません。フィンランド兵の士気は高く、自身は混乱せず、攻めてくるソ連兵を混乱させます。サイコロの出目もソ連軍は振るいません。また、ソ連軍は戦車2両をIII号突撃砲との撃ち合いに投入しており、歩兵を支援する火力が不足していました。
 ソ連軍に狂暴兵が登場したものの、これもフィンランド軍の抵抗線を打ち破る助けにはなりませんでした。

↑ 3ターン目のソ連軍移動フェイズの終わり。画像左上の、地図盤中央付近に残留火力が帯のように広がっています。

 ソ連軍の突破を食い止めたフィンランド軍は、さらに前線を下げました。歩兵の数は減らさず、希望通り戦線を維持しています。フィンランド軍プレイヤーは、ここが主抵抗線のつもりでいました。

 この主抵抗線は、フィンランド軍の失敗により若干いびつなかたちになっていました。森が広がっていて下がりやすい左翼に兵を下げたため、部隊が左に偏ってしまったのです。一見すると中央から右翼の兵が足りなく見えます。熟練のソ連軍プレイヤーは、そこに賭けてきました。

(3)終盤:ソ連軍の最後の突撃
 5ターン目になり残り時間が少なくなってきます。
 ソ連軍は、フィンランド軍中央が薄いと見て、歩兵を突入させてきます。なんとか勝利条件エリアに食い込もうと考えているのです。
 ソ連軍の攻撃は、フィンランド軍のFPF[2]も誘う果敢な突進でした。防御側は四方から撃ってこれを止めようとしますが、麦畑などのLOS妨害に邪魔されて、1個分隊のソ連兵を通してしまいます。

 ソ連軍は、これに後続を送り込もうとします。そこで、前面建物2階に隠匿していたフィンランド軍分隊が姿をあらわして射撃し始めます。後続を止められ、さらに露見しているフィンランド兵をカウンティングして、同じ区域にヒーローがいることを悟ったソ連軍プレイヤーは勝利条件の達成を断念、投了しました。
 5ターン目でした。

↑ 5ターン目のソ連軍移動フェイズ(MPh)の終わり。残り2ターンあるのですが、ソ連軍に兵力が残っていません。

4 対戦を終えて
 対戦相手のソ連軍プレイヤーはヴェテランで、防御側の弱点を確実に攻めてくきました。手強い相手でした。ここで言うフィンランド軍の弱点は、前半はフィンランド軍が予備を投入するまでの中央付近、後半はフィンランド軍が左翼に寄ってしまったときの中央です。
 長年ウォーゲームを対戦してきた嗅覚とでも言うべきものでしょうか。フィンランド軍がこの攻撃に持ちこたえたのは、ひとえにユニットの高い士気と自己回復能力のおかげです。

 ソ連軍の取った手で、フィンランド軍プレイヤーが意外に思った点が、一つあります。ソ連軍の戦車が、フィンランド軍のIII号突撃砲に撃ち合いを挑んできた点です。フィンランド軍プレイヤーが考えていたソ連軍の戦車の使用法は、対歩兵に使うとというものでした。フィンランド軍の突撃砲は後方にいるので、ソ連軍戦車は、まずは前線の歩兵だけを相手にすると予想していたのです。実際には、ソ連軍はAFV vs AFVの撃ち合いを挑んできました。突撃砲1両を失いかけましたが、歩兵への圧力は減って助かりました。

5 ルールについて
(1)火線残留火力と建物迂回移動
 歩兵が、火線残留火力のある建物区域を迂回している場合、火線残留火力の攻撃に対して区域のTEM(地形効果修整)は適用されるか?
 上の疑問への回答が、ゲーム中に必要になりました。
 答えは、「適用される」です。
 ですので、できるのであれば、火線で即応射撃した方がいい場合があります(即応射撃には、FFNAMが適用されないがTEMも適用されないため)。

脚注

 畏縮:Cowering;指揮官に指揮されていない複数兵ユニットの射撃で、サイコロの出目がゾロ目であった場合におこる不測の事態。兵が射撃に専念せず、臆病な振る舞いをしてしまったことをあらわしている。射撃は低い火力で解決され、これに伴って残留火力が減る場合がある。さらに、畏縮したユニットには適切な射撃済みマーカーが置かれ、射撃を撃ち尽くしてしまった状態となる。連続臨機射撃や機関銃のROFが残っている等、まだ射撃できる状態であっても、射撃を撃ち尽くしてしまった状態となる。残留火力や射撃回数の目算がずれるので、防御臨機射撃中におこると影響が大きい。一部の兵士(フィンランド軍や一線級以上のイギリス兵、戦意高揚状態等)は、これを免れる。

 FPF:Final Protective Fire;緊急防御射撃。相手の移動フェイズ(MPh)中に、敵ユニットの移動に応じておこなう防御臨機射撃のうち、射撃を撃ち尽くした歩兵がおこなう射撃。火力が半減する、『隣接』か同一区域にいる敵に対してしかおこなえない、等の制限がある。加えて、射撃のサイコロの出目を自身に対する士気チェックの出目として適用する、というペナルティがある。出目によっては釘づいたり混乱したりする恐れがある、敵に連接された歩兵の最終手段の一つである。

以上
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