2020年12月 ASL "Patton's Prayers [196]"対戦記録

 2020年12月の千葉会でASLを対戦した。
 シナリオは"Patton's Prayers [196]"である。
 これは、その対戦記録である。

1 シナリオの概要
2 シナリオの分析と方針
3 対戦の経過
4 対戦を終えて
5 ルールについて
  脚注

1 シナリオの概要
1.1 全般
 1944年12月の西部戦線が舞台のシナリオである。ドイツ軍の守る村をアメリカ軍が攻撃する。

 南から攻めるアメリカ軍は、ゲーム終了時に、村の北側中央の盤端まで、啓開された道路を確保すれば勝利する。「啓開された道路」とは、道路かその『隣接』区域に統制状態のドイツ軍複数兵(MMC)がおらず、瓦礫で覆われてもいない状態である。

 ゲームの長さは5ターンであった。

 シナリオ特別ルールで、建物と道路の一部に瓦礫が置かれる。このシナリオで使われる地図盤3は、『スコード・リーダー』時代からある古い地図盤である。したがって、ヴェテランプレイヤーはLOS(Line Of Sight;視線)に慣れている。それが、建物の一部を瓦礫化することで、建物があったときは通らなかったLOSが通るようになり、新鮮に感じる。瓦礫には、北東経由の道路ルートを塞いで、勝利条件を調整する意味もあった。

 積雪が影響し、歩兵が斜面を上り下りするのに、余計な移動力が必要であった。また、築壕の試みは、シナリオ特別ルールで、不可とされている。

1.2 攻撃側アメリカ軍について
 8個分隊の兵士と、M4シャーマン戦車が4輛、装甲ハーフトラック7輛がその兵力である。
 兵士はすべて6-6-7のエリートライフル分隊であった。指揮官も8-1と8-2がそれぞれ2人の、合計4人いる。支援火器は少なめで、バズーカが4門と、軽迫撃砲が1門であった。
 バリエーションの豊富なM4シャーマン戦車は、装甲が厚く移動ポイントが少ないM4A3E2(通称ジャンボ)が2輛と、対戦車能力の高い長砲身76ミリ砲を装備したM4A2(76)Wが2輛であった。米軍プレイヤーは、ゲーム開始前に2輛選んで、ジャイロスタビライザーを搭載できる。
 装甲ハーフトラックは、中機関銃を3挺搭載したM3(MMG)が1輛、偵察車仕様のM2が1輛、標準的な装甲兵員輸送車であるM3が5輛である。兵士が8個分隊と記載したが、M3(MMG)ハーフトラックは、固有の分隊を1個載せてゲームに登場する(H章参照)ので、実質的には9個分隊である。

 シナリオ特別ルールで、米軍歩兵分隊は、自由に半個分隊に展開できた。

 米軍は地図盤南端から進入する。

1.3 防御側ドイツ軍について
 ドイツ軍の兵力は、一線級から徴集兵までの計12個分隊の兵士である。砲はない。装甲戦闘車両(AFV)もない。支援火器は、中機関銃x2、軽機関銃x2、パンツァーシュレックが1門である。これ以外の対戦車火器は、ドイツ軍兵士の固有の支援火器であるパンツァーファウストと対戦車磁気吸着爆雷のみである。
 指揮官は豊富で、9-1から8-0まで4人いた。

 ドイツ軍は北側地図盤に配置する。シナリオ特別ルールで、南側地図盤には進入できない。

1.4 担当
 サイコロをふって、わたしが防御側ドイツ軍を担当することに決まった(爾後、ドイツ軍プレイヤーと表記する)。

2 シナリオの分析と方針
2.1 分析
 攻撃側の米軍の利点強みは、2つ考えられる。

 1つは、AFVを多く有していることである。ASLにおいて、AFVは、1輛で、移動フェイズ(MPh)に最大3つの相手スタックの臨機射撃を無力化しうる[1]。すなわち、1つめの相手スタックの火力を煙幕で減衰させ、2つめの相手スタックを『隣接』区域からの移動中の機関銃射撃で混乱・釘付けにし、3つ目のスタックをVBMフリーズ[2]で射撃できなくするのである。これは大きな利点である。AFVが敵歩兵をVBMフリーズに拘束し白兵戦を生き残れば、相手は混戦状態となり、統制状態ではなくなる。すなわち、勝利条件を満たさなくなるのである。
 ただし、この手は撃破されるリスクが大きい。理由は2つある。1つは、米軍の装甲ハーフトラックは上部開放型(OT;Open Topeed)である点である。OTのAFVは、白兵戦に対して脆弱である。もう1つは、相手が大戦後期のドイツ軍であることである。大戦後期のドイツ兵は、固有の支援火器としてパンツァーファウストや磁気吸着爆雷を使用できるため、近距離での対戦車白兵戦能力が他国製の兵士より高いのである。

 米軍の強みの2つ目の利点は、損害の上限(所謂、CVP Cap)がない点である。ASLのシナリオにおいて、攻撃側の損害の上限が定められている場合がある。一定以上損害を受けると、攻撃側の負けが決まる、という内容である。このシナリオの米軍には、それがない。どんなに損害を受けようと、ゲームの終了時に勝利上限を満たしていれば勝てるのである。

 逆に、米軍の弱点は何か。これは、時間である。5ターンという短い時間で、地図盤2枚を横断、制圧しなければならない。AFVが多く素早く移動できる米軍にとっても、簡単ではなかった。

 防御側のドイツ軍の利点は、部隊の数が多いことである。徴集兵を含めてだが、12個分隊いる。勝利条件の指定は複数兵カウンター(MMC)であり、分隊か半個分隊かは問わない。ドイツ兵は、火力では米兵の2/3だが、数が多いのは頼もしい。米軍は、より少ない数で、あちこちに散ったドイツ兵を掃蕩しなければならない。

 逆にドイツ軍の欠点は何か? これは、対戦車火器の欠如である。砲や戦車などの、遠距離から敵戦車を撃破できる火器が一つもない。戦車に対しては、射程4ヘクスのパンツァーシュレックが1門あるだけで、あとは固有の対戦車支援火器であるパンツァーファウストが頼りである。装甲の薄いハーフトラックに対しては、近距離からの機関銃が効く可能性があるが、戦車に対しては無力である。

2.2 方針と配置

 防御側ドイツ軍として、南から攻めてくる米軍の近接経路(AoA;Avenue of Approach)を予測した。地形を見て、独軍右翼正面(西側)から来る可能性は低いと判断した。なぜならば、石垣と果樹園が経路を妨げているからである。ハーフトラックは、石垣を越えることはできないので、大きく遠回りしなければならない。また、戦車は石垣を越えられるが、その跨乗兵は果樹園で振り落とされてしまう(強制的に降車するだけでなく、緊急脱出による士気チェックを強いられる)。ゲーム時間が短いことを考えると、米軍の兵士は乗車兵・跨乗兵を使うだろうから、右翼(西側)のルートは取りがたいと考えた。

 残されたルートは中央と独軍左翼(東側)である。それぞれ検討する。

 東側ルートは、道がまっすぐのため走りやすい。車輌が兵を乗せて直進し、丘の陰で降車させ、そのまま丘を越えて村を攻める、という経路が考えられた。
 ドイツ軍がこれを妨げるためには、丘の東側に部隊を多く置かなければならない。しかし、そうすると、米軍が中央ルートを取った時に対応しづらい。また、ドイツ兵が後退しようとすると、丘を越えて下がらざるを得ず、斜面を登るところを撃たれる。これは避けたい。
 米軍がこのルートを選んだ場合、ドイツ軍は丘の東側に延翼しなくても、中央に配置しておけば、部隊をシフトして対応できると考えた。丘の陰まで進出されてしまうが、丘と道路で防衛線を二線引ける。

 したがって、米軍が中央のルートを選んだ場合を考えて配置することとした。まずは中・軽機関銃とパンツァーシュレツケの配置を考える。移動が難しい砲や重火器、AFVから順番に配置を考えるというのは、鈴木拓也氏がコマンドマガジンに掲載した初期配置の理論[3]に従ったためである。本シナリオのドイツ軍には砲やAFVがないため、支援火器から順に配置を考えた。
 中機1挺を右翼の丘の高度レベル2に、軽機1挺を左翼の丘の高度レベル2に置き、村の入り口を火制する。村の入り口近くの中央の建物2階(高度レベル1)にも中機1挺を配置し、瓦礫越しに多くの区域を撃てるようにした。残りの軽機1挺は、林の奥まったところに配置する。側防機関銃的に、火線を引いて米軍の移動を妨げようと考えた。こうして、機関銃で、村の入り口にキルゾーンを設定した。
 次はパンツァーシュレックである。これは、村の中央右側の石壁に配置した。建物に挟まれた道路に対して、歩兵は街路戦闘で白兵戦をしかけることができる。しかし、村の右側は、建物が瓦礫化したせいで、街路戦闘できる道路が少ない。米軍が、この隙をついて、AFVを後方に回り込ませてくる可能性があると考えた。これを抑えるためである。

 配置した火器のそばに、援護する部隊を配置する。米軍はAFVが多く、損害の上限もない。したがって、VBMフリーズやオーバーランをしかけてくる可能性が高いと考えた。これを、パンツァーファウストで止めるためである。実際に止められなくても、相手が警戒して思いとどまる抑止効果を狙った。

 後方にある3階建て(高度レベル0~2)の建物には、部隊を配置しなかった。たしかに、この建物の上階からであれば、障害物を越えて遠くが見通せる。射程の長い中機関銃を置けば、より遠くの、より多くの区域を撃てる。しかし、欠点が2つあった。1つは、LOSの可逆性である。見えると言うことは、見られると言うことである。AFVの多い米軍の良い的になり、射撃を集中される恐れがあった。戦車や装甲ハーフトラックに遠距離から狙われては、反撃できずに討ち取られてしまうかもしれない。2つ目は、勝利条件に寄与しない恐れである。この建物は、道路に『隣接』していない。米軍の勝利条件を妨げるためには、地上レベルに降りて建物を離れて道路に『隣接』する必要がある。この2つの理由から、部隊を置く価値はそう高くないと考えた。

 ドイツ軍プレイヤーは、丘の東側の麓にある建物に、軽機関銃を持った分隊を前衛として配置することも考えた。道路上に火線を引いて、米軍の接近を妨げるのである。ただ、この手は有効性に疑いを持ち、採用しなかった。火線は、BU(Buttoned Up;操作班・乗車兵が顔を伏せた態勢)状態の車輌に対して効かないため、米軍は容易に避けられる。加えて、火線に脆弱な跨乗兵を通したいのであれば、米軍は軽機関銃スタックに対して装甲ハーフトラックでVBMフリーズをかければよい。VBMにより火線はキャンセルされるので、車輌1輛と引き替えに跨乗兵を通せる。AFVや歩兵の火力に富んだ米軍なら、前進射撃でも戦果を期待できるので、VBMをしかけたAFVを白兵戦(CCPh)で失わなくてすむ可能性も高い。したがって、この配置は有効でないと考え、採用しなかった。

 以上のような方針で配置し、対戦に臨んだ。
 
・写真1 開始時の様子。黄緑色のコマがアメリカ軍、水色のコマがドイツ軍。米軍プレイヤーは、車輌の移動を間違えないように、米軍の「?」マーカーでマーキングしている。


3 対戦の経過
3.1 序盤(第1ターン~第2ターン)

 第1ターンの米軍プレイヤーターン、米軍が盤外から進入するシナリオのため、米軍プレイヤーが盤外に配置する。
 米軍の準備射撃フェイズ(PFPh)はない。移動フェイズ(MPh)から始まる。
 ドイツ軍プレイヤーの予想したとおり、米軍は兵士たちを戦車・装甲ハーフトラックに乗せて、進入してきた。地図盤中央の、村の入り口に向かって。ただし、ドイツ軍プレイヤーの予想よりも早く。
 装甲の厚いM4シャーマンジャンボ戦車は、移動ポイント(MP)が少ない。それゆえ、村の入り口に近づくのに時間がかかるとドイツ軍プレイヤーは考えていた。跨乗兵の降車にもMPを使うからである。しかし、アメリカ軍プレイヤーは、砲塔を回して跨乗兵を振り落とした。士気チェックを強いられるが、MP消費なしに兵士を降ろすことができる。

 ドイツ軍プレイヤーは、中機関銃の砲腔照準区域を、米軍車輌のMPを計算して設定していた。この計算には降車に必要な分も数えていたため、砲腔照準はあたらなかった。米軍部隊は、砲腔照準区域に入らなかった。

 さらに米軍は、ESB(速度超過の試み、装軌式車輌が移動ポイントを増やせる代わりに、走行不能となるリスクがある)を実施し、さらに早く進んだ。ゲームの時間が短いこともあって、リスクを承知で行ったのだろう。
 ESBをパスしたハーフトラック1輛が、村の東端に突入してきた。独軍の後退を妨げる良い位置であった。これは、独軍のパンツァーシュレックに撃たれて、炎上する。搭載していた半個分隊と軽迫撃砲も失われた。

・写真2 第1ターンの米軍移動フェイズ(MPh)の終わり。


 裏のドイツ軍のプレイヤーターン、ドイツ軍は移動フェイズ(MPh)に、スカルキング[4]で凌ごうとする。しかし、前衛の徴集兵が、移動力の不足でLOS(Line Of Sight;視線)外に下がれず、防御射撃(DFPh)を受けて混乱する。ドイツ軍プレイヤーは、火力の高い米軍の前に出ることの脅威を感じた。

 ここでドイツ軍プレイヤーは1つ過ちを犯した。左翼の建物のドイツ軍分隊を、建物の2階に上げたことである。正面の米兵が、丘伝いに村へ進入するのを火制するため、丘の上を撃てる位置に移動させたのである。しかし、積雪で丘の上り下りに余計な移動力を使うためか、米軍はこの接近経路を選ばなかった。くわえて、2階に上がったことにより、第2ターンで米軍車輌への対戦車手段に欠くことになった。

 第2ターン、米軍は煙幕とVBMフリーズを使い、村の入り口に寄せてきた。近づいてきた車輌に対して、ドイツ軍は、前方の歩兵が臨機射撃で残留火力を残して後続の米兵を妨げ、後方の歩兵がパンツァーファウスト等を撃って迎え撃つ。しかし、これがあたらない。パンツァーファウストは外れ、パンツァーシュレックは弾切れで除去、残留火力は米軍歩兵を止められない。

 米軍のAFVが近づいてきたのは、ドイツ軍の対戦車能力が低下していたのにも一因があったと考えられる。建物の2階からでは、街路戦闘によるCC(対戦車白兵戦)対応射撃はできず、パンツァーファウストには後方噴射のペナルティがある。したがって、既述のとおり建物2階に1個分隊を上げた状態では、対戦車手段が少なくなっていた。米軍は、この弱点を突いてきたのである。

・写真3 第2ターンの米軍移動フェイズ(MPh)の終わり。降車した米兵が、煙幕の援護の下、村に殺到している。


 米軍は突撃フェイズ(APh)に2箇所で白兵戦に突撃し、ドイツ兵を混戦に拘束した。米軍が火力で勝っているが、一時的疲労状態(CX)であるため、決着がつかない。

 裏の第2ターンドイツ軍プレイヤーターンで、ドイツ軍は村の入り口を放棄して後退する。米軍の戦車からの砲撃が激しく、このラインは維持できないと判断したためである。これは、事前にある程度予定していた行動である。
 建物2階に上げた分隊も、今更ながら1階に降ろした。

 白兵戦フェイズ(CCPh)に混戦の区域で事件が起きた。ドイツ軍プレイヤーが振ったサイコロの出目は1ゾロ! 指揮官登場と相手の除去となるかと喜んだが、米軍プレイヤーの出目も1ゾロ、相互に除去となる。

3.2 中盤(第3ターン~第4ターン)

 第3ターンの米軍プレイヤーターン、米軍は前線の兵力が不足していた。もともと歩兵が少ないうえ、白兵戦で1個分隊を失っているからである。それゆえ、村の中央へはこのターンは進出できなかった。
 しかし、米軍は、ドイツ軍左翼に対しては、AFVと歩兵と攻めてきた。ドイツ軍は、臨機射撃でハーフトラック2輛を撃破するも、米軍歩兵を止められない。プレイヤーターンの終わりには、米兵には肉薄され、米軍戦車は丘の上と村の裏側に進出している、という状態であった。

 裏の第3ターンドイツ軍プレイヤーターンである。ドイツ軍プレイヤーは、左翼を村の中心に後退させたかった。しかし、丘の上と村の裏側に米軍戦車がいて、前面には米軍歩兵が進出しており、道路で撃たれずに下がれない。縦深があり後方が安全なら、撃たれて混乱しても潰走できる。しかし、裏側に米軍戦車がいる状況では、すぐに潰走不能に追い込まれてしまう。
 ドイツ軍プレイヤーは覚悟を決めた。左翼の分隊は、『隣接』した状態で米軍と撃ち合う。ドイツ軍の準備射撃(PFPh)は、建物の高い地形効果に阻まれて効果なし。撃ち返す米軍の防御射撃(DFPh)は、大火力と指揮修整の効果もあり、ドイツ兵を混乱させた。

 右翼ではドイツ軍が上手くやった。後方に進出してきた米軍のハーフトラックを、機関銃で麻痺(stun)させ、歩兵が白兵戦をしかけるコンボで撃破した。AFVの残骸は遮蔽効果もあるため、ドイツ軍は下がりやすくなった。

 第4ターンの米軍プレイヤーターン、時間の残り少ない米軍は、左翼と中央で歩兵を寄せる。瓦礫となった建物に立て籠もるドイツ軍が『隣接』区域から臨機射撃を浴びせるが米兵は持ち堪えた。丘の麓で孤立したドイツ兵半個分隊は、米兵と白兵戦に入る。
 
 停滞していたドイツ軍右翼正面に対しては、米軍プレイヤーはM4シャーマン戦車を建物に突入させて圧力をかけてきた。建物への車輌の進入は、Bogで移動できなくなるだけでなく、地下室に落ちて除去となる可能性もある。そのリスクを負っての選択であった。このBog判定はパスした。

 さらに1輛のM4シャーマン戦車が、村の最深部に回り込んでいる。アメリカ軍プレイヤーの狙いは潰走不能と包囲だろうと、ドイツ軍プレイヤーは予想した。

・写真4 第4ターンの米軍移動フェイズ(MPh)の終わり。赤い円の中が、リスクを負って建物に進入した米軍戦車である。。


 裏の第4ターンのドイツ軍プレイヤーターンである。ドイツ軍は、村の中央の指揮官とスタックしている分隊を、半個分隊2個に展開させる。分隊であれ半個分隊であれ、複数兵ユニットが残っていれば、米軍の勝利条件を妨げる可能性がある。であれば、複数区域に散っていた方が、米軍には邪魔になると考えてのことである。
 あとは、移動フェイズ(MPh)でスカルキングして、大火力の米軍歩兵や、戦車に撃たれないように振る舞う。そして、突撃フェイズ(APh)で、最終陣地を組むのである。

 しかし、移動中に事故が発生する。場所は右翼。建物に突っ込んできたM4シャーマン戦車の至近のドイツ兵だ。全く撃たれない区域がなかったので、比較的リスクの少ない区域に警戒移動で下げた。そこに、米軍の臨機射撃が命中した。この分隊は、士気チェックで1ゾロを振って戦渦となり、狂暴化したのである。
 部隊の数が減ってきている終盤の防御側にとって、ここで1個分隊が狂暴化したのは手痛かった。勝利条件でも、ドイツ側に要求されているのは「統制状態」である。狂暴兵は統制状態ではないため、敵ユニットを除去して元に戻らない限りは、影響しない。
 厳しい状況で最終ターンを迎えた。

・写真5 ↑ 第4ターンのドイツ軍プレイヤーターンの終わり。ドイツ軍は、来たるべき最終ターンに備えて、分隊を半個分隊に展開し別々の区域に別れさせてリスクを分散した。

3.3 終盤(第5ターン)
 勝利条件で損害の上限を設定されていない米軍は、歩兵と戦車で詰めてくる。ドイツ軍も、他に選択肢もないので、臨機射撃で迎え撃つ。狭い範囲の戦いとなった。
 移動フェイズ(MPh)が終わると、ドイツ軍としては比較的安定した結果となった。ドイツ軍の中機関銃スタックに対して、米軍歩兵は白兵戦をしかけられる位置に近づけなかったのである。ドイツ軍の狂暴兵や、村の一番北側の建物にいるドイツ兵分隊も、米軍歩兵の白兵戦からはフリーであった。前哨としたドイツ軍半個分隊だけは、突撃フェイズ(APh)で踏み込まれる位置にいたが、これはドイツ軍プレイヤーとしては想定の範囲内である。
 ただし、ドイツ軍の臨機射撃と防御射撃(DFPh)は振るわなかった。街路戦闘と防御射撃のパンツァーファウストを合わせても、米軍戦車を1輛も破壊できなかったのである。裏のドイツ軍プレイヤーターンの米軍防御射撃(DFPh)が、大変脅威であった。戦車は1輛で、主砲と車載機関銃を合わせて、数個分隊に匹敵する火力を持つ。

 白兵戦(CCPh)で、予期していた半個分隊が除去され、米軍プレイヤーターンが終わる。
 ドイツ軍は、2.5個分隊が残っていた。ただし、1個分隊は狂暴化している。また、もう1個分隊は、米軍戦車が迂回移動でその区域に進入し停止したため、混戦状態となっている。この2個分隊は統制状態ではないため、勝利条件に寄与するためには、米軍の射撃に耐えた上で、この状態から脱する必要があった。

・写真6 第5ターンのアメリカ軍プレイヤーターンの終わり。


 裏の第5ターンドイツ軍プレイヤーターンである。
 選択肢がないため、ドイツ軍の中機関銃スタックは準備射撃(PFPh)を行う。これは、効果がなかった。

 次に、移動フェイズである。最初に狂暴兵が襲撃をしなくてはならない。ルールに従い、M4戦車のいる区域に突入する。最も近く、進入に必要な移動力も少ないからである。彼らは、周囲からの臨機射撃で除去された。米軍の火力を吸収してくれたので、よしとしよう。

 そして、米軍の防御射撃フェイズ(DFPh)。ドイツ軍は、ここを残された1.5個分隊で耐えなければならない。
 混戦に拘束されたドイツ軍分隊に対して、米軍は四方から射撃を浴びせる。『隣接』した状態から倍火力で撃たれては耐えられず、この分隊は混乱してしまった。

 残された、ドイツ軍の中機関銃スタックに、米軍の火力が集中する。しかし、彼らは士気チェックにことごとく耐えた。米軍ユニットがすべての射撃を終え、ドイツ軍が勝ったかと思った。
 そこで米軍プレイヤーは、狂暴兵が突入したM4戦車の主砲をまだ撃っていないことに気づいた。砲塔を回しての射撃が中機関銃スタックに命中し、スタックは混乱してしまう。この最後の射撃で、米軍の勝利となった。

・写真7 ゲーム終了時。


4 対戦を終えて

 米軍の最後の射撃1回に耐えられず負け、大変悔しい思いをした。もしかたら、そこまでの接戦を戦えたことを良しとすべきかもしれない。しかし、負けは負けである。くわえて、初ターンにドイツ軍は砲腔照準区域を完全に外した。もしこれが効いていれば、米軍は最後の射撃をおこなう余裕がなかったかもしれない。相手プレイヤーのとりうる選択肢を考えられず、惜しいことをした。米軍や、チェコ製の戦車に対しては、常にESBを考慮する必要がある。

5 ルールについて
 特になし。

脚注

 詳細の事例は、"ASK Journal#8"掲載の"The Agony of Defeat"の"Figure 5"参照。

 VBMフリーズ:VBM Freeze;敵の射撃を制限するテクニック。自軍の装甲戦闘車輛を、迂回移動(Vehicle Bypass Move)で、敵の歩兵ユニット等のいる建物・林区域に進入させ、射撃の目標制限のルールを利用して、他を撃てないようにする。白兵戦による反撃を防ぐために機動(Motion)状態で移動フェイズ(MPh)を終了することが多い。防御側の対応策として、直前区域の車輛に対して臨機射撃して残留火力を残して後続の敵歩兵を防ぐ方法や、CC対応射撃で敵AFVを攻撃する、等がある。

 鈴木拓也「Fight to the Last Ditch for ASL」『日本語版コマンドマガジン』82号(2008.08) p31

スカルキング:Skulking;移動フェイズで敵のLOS(視線)外に警戒移動で退き臨機射撃や防御射撃を逃れ、突撃フェイズ(AFPh)で戻り、戦線を維持する防御のテクニック。こそこそ移動とも言う。

以上
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